湧川哲行

思い出を残したい

山崎浩太郎「演奏史譚」

f:id:wakugawatetsuyuki:20180405001302j:plain山崎浩太郎様が、私のお店にご来店したのは昨年の4月13日のディナータイムでした。
サイン入りで「演奏史譚」の本をいただきました。何日もかけ読終えましたが、昨年は私の生涯で最も悪い事の多い年でもあり記憶も定かではありませんでした。今年3月に母を亡くしやっと落ち着いたところで目に入ったのが「演奏史譚」の本でした。もう一度読み直そうと徹夜して2日で読み終えました。
私は、蓄音機で数多くのレコードを聴いてきましたが、とても恥ずかしく思えました。
著者が「あとがき」に書いていますが『音楽の特徴を文章だけからで感じるのは、いかに吉田(秀和)の筆力をもってしても、限界がある。しかし、モノラルの古びた音であったとしても、録音が残っていれば、印象はまるで違ってくる。文章を録音が、また録音を文章が補って、立体的に楽しむことができる。』
1954年7月26日ザルツブルクでのフルトヴェングラー指揮、ウェーバー歌劇(魔弾の射手)にしても、吉田が『細かなニュアンスに富み、序曲の演奏にクレッシェンドやディミヌエンドをたっぷりつけて嫌味でない』と書いた演奏を、良く聴いてみるとわかる。この本は録音データと、演奏内容のコメントもあり、とても分かりやすく書き上げています。トスカニーニ最後の演奏会では、ワーグナー歌劇(タンホイザー)序曲のバッカナーレを指揮中に迷って指揮を止めてしまい、スタッフが放送を打ち切った有名なエピソードとともに、その演奏会を記録した(RCA初のステレオ録音でもあった)と紹介されています。 1954年と55年というクラシック界に次々と新しいスターが生まれてきた時代に焦点を当てたのは、山崎浩太郎様の並みならぬ努力と言える。フルトヴェングラーの死、トスカニーニの引退、マリア・カラスやカラヤンが脚光を浴び始めた時代。その事がこの本を読む事で良くわかる大変素晴らしい本です。
山崎浩太郎様の益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます。

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