私は、今なおアナログの世界、しかもゼンマイ仕掛けの蓄音機で聴くSPレコードを愛してやまない。
そんな私の店にロシア出身の名ピアニスト、イリーナ・メジューエワさんが来店された。どうやらかなり蓄音機に興味があったようだ。ロシア出身のピアニスト、ラフマニノフの他、リパッティにバイオリンからジャック・ティボー、フリッツ・クライスラーなどを聴かせた。さすがプロ、音の聞き分けには、鋭いものがあると感じた。この音響は、電気の力をかりず音量に生々しい音質に感激したようだった。驚いたのは、日本の古典にも興味があるようで、なかでも大の落語好きだそうだ。
金馬の居酒屋をSPレコードで、聴かせて上げた。蓄音機の本領発揮の音質だ。真剣な眼差しで聴き惚れているようだった。来店された時間は、6時頃だったが帰りの時間は12時近くだった。それから私は翌日、早速メジューエワさんのレコードを買いに行った。まずはショパンのCDを買って聴いてみた。
メジューエワさんは、作曲家と譜面を常に大切に思うからこそ技巧はもとより、自分の個性を最大に発揮している。作曲家が描いた楽譜をイメージと様式を大切にしているからだと思う。私は、現代のピアニストがこれだけバランスのとれた演奏を知り恥ずかしく思った。
ノクターンは、あまりにも名曲で数多くのレコードがあります。メジューエワさんの演奏は、ショパンの気持ちが伝わって来るように素晴らしい演奏だ。夜想曲のバランスの良い演奏に余韻が残った。レコードでは、満足出来ないコンサートに行くしかないそんな気持ちにさせてくれた。シューベルトも名演奏だ次回書く事にした。何よりメジューエワさんは、二台のピアノを弾きスタインウェイに、100年前にチェコで製造されたペトロフを使用するそうだ。益々目が離せなくなった。
これからもご活躍に期待したい。
湧川哲行